伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
彼女はいつもこんな調子なのだ。
優秀で城内のことはなんでも知っているのに、肝心なところが甘い。
そのせいでいつもエレナはイライラさせられてしまうのだ。
貴族である自分がなぜ庶民の侍女に煩わされなければならないのか。
といっても、エレナにとってミリアは唯一信頼できる侍女であることに変わりはない。
それに、貴族の娘として甘やかされてきたエレナは、ミリアがいないと何もできないことも自覚しているのだった。
「お待たせいたしました、お嬢様」
肩掛けを持って戻ってきた侍女が鏡をのぞき込みながら左右の長さを調整する。
「まあ、少しはましになったかしら」と、エレナはうなずいて見せた。
「大変お美しゅうございますよ」
「だといいけど」
「では、旦那様にご挨拶をして、出発いたしましょう」
ドアを開けた侍女にうながされてエレナは部屋を出た。
父のシュクルテル伯爵はもう長いこと病で伏せっていた。
医者の懸命の治療で命を保っているものの、ここ最近ではもう起き上がることもできなくなっていた。
主寝室の重いドアをミリアが押し開ける。
「旦那様、お嬢様がご挨拶に参りました」
中から返事はない。
エレナはベッド脇に歩み寄った。
「お父様、具合はいかがですか」
耳元で声をかけるとようやく目が開く。
「おう、我が娘よ」と、伯爵が震える手を伸ばそうとする。
エレナはその手を取ってさすった。
「優しい娘よ。今日は一段と美しいのう。亡き妻を思い出すようじゃ」
「お母様のお召し物だそうです」
「おうおう、そうであったのう」と、青白い顔に落ちくぼんだ目を細めながら伯爵が口元に笑みを浮かべた。
優秀で城内のことはなんでも知っているのに、肝心なところが甘い。
そのせいでいつもエレナはイライラさせられてしまうのだ。
貴族である自分がなぜ庶民の侍女に煩わされなければならないのか。
といっても、エレナにとってミリアは唯一信頼できる侍女であることに変わりはない。
それに、貴族の娘として甘やかされてきたエレナは、ミリアがいないと何もできないことも自覚しているのだった。
「お待たせいたしました、お嬢様」
肩掛けを持って戻ってきた侍女が鏡をのぞき込みながら左右の長さを調整する。
「まあ、少しはましになったかしら」と、エレナはうなずいて見せた。
「大変お美しゅうございますよ」
「だといいけど」
「では、旦那様にご挨拶をして、出発いたしましょう」
ドアを開けた侍女にうながされてエレナは部屋を出た。
父のシュクルテル伯爵はもう長いこと病で伏せっていた。
医者の懸命の治療で命を保っているものの、ここ最近ではもう起き上がることもできなくなっていた。
主寝室の重いドアをミリアが押し開ける。
「旦那様、お嬢様がご挨拶に参りました」
中から返事はない。
エレナはベッド脇に歩み寄った。
「お父様、具合はいかがですか」
耳元で声をかけるとようやく目が開く。
「おう、我が娘よ」と、伯爵が震える手を伸ばそうとする。
エレナはその手を取ってさすった。
「優しい娘よ。今日は一段と美しいのう。亡き妻を思い出すようじゃ」
「お母様のお召し物だそうです」
「おうおう、そうであったのう」と、青白い顔に落ちくぼんだ目を細めながら伯爵が口元に笑みを浮かべた。