イミテーション・ハネムーン

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（さぁ…頑張らなくちゃ…！）


家に帰った私は、早速、部屋着に着替えて、最後の作業にとりかかった。
大半のものは処分することに決まっている。
私は、四月いっぱいでこの部屋を出る。
長年暮らして来ただけに、いろんなことが思い出されて、私の胸に寂しさが去来する。



ふと頭をかすめた思い出に、私は苦しくなって深く俯いた。
それは、達也との思い出の数々…
彼は何度もこの部屋を訪ね、泊まって行った日もたくさんあった。
二人で食事をして…
一緒にDVDを見たり、ゲームをしたり…
そして、愛し合って…



あの時…まさか、こんな日が来るなんて、考えたこともなかった。
ただただ、毎日が幸せで…
私は、達也と結婚するものだと信じて疑わなかった。



けれど、そうはならなかった。
達也はもうすぐ結婚する…私とは違う女性と…



「紗季は付き合うのには最高の女だけど、結婚する相手じゃないよな。」



達也は、悪びれもせず、そう言って微笑んだ。



「……そうなんだ……」

混乱した私には、そう言うのが精いっぱいだった。



「紗季も早く良い相手みつけろよな！」

「うん…ありがとう。」

へらへら笑いながらそんなことを口にした自分自身に酷く幻滅した。
自分で自分を殴りたいような気分だった。



去って行く達也を目で追いながら…
私はもう生きられない…いや、生きていたくないと考えていた。