イミテーション・ハネムーン
「あぁ、良く撮れてるよ。ほら。」

デジカメの液晶には、山をバックに微笑む私と圭吾さんの画像があった。
自分でいうのもなんだけど、けっこうお似合いの雰囲気だ。
本当の夫婦みたい。
だけど…実際はただの他人…
今日、初めて会ったばかりの人…



「紗季…どうかしたの?」

「え?う、ううん、なんでもない。
うん、本当に良く撮れてるね。」

そんなこと、最初からわかっていたこと。



(そうよ、そんなこと気にしちゃだめだわ。
これは私にとって人生最後の旅行…楽しまなくちゃ。
嘘でもなんでも楽しめば良いのよ。
高いお金を払ってるんだから…)



自分に言い聞かせるようにそんなことを思った。
この偽りの旅行を楽しくするのも、楽しくないものにするのも私自身の考えようなんだから。




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