イミテーション・ハネムーン
その時、少し離れたところから女性の怒声が上がった。



「おまえら、みんな、別れてしまえ!!
別れて不幸になれば良いんだ!」

女性は、そう言うと手に持っていた缶ビールをぐいと飲み干し、投げ捨てた。
目は座り、顔は赤い。
一目でその女性が酔っていることがわかった。



「見せもんじゃないぞ!じろじろ見るな!」

悪態を吐き、ふらふらと歩いた女性は、足がもつれ、無様に転倒した。



「あっ!」

私が声を上げるよりも素早く、圭吾さんは女性の元に走り寄った。
どうしたら良いのか戸惑いながらも、私もそのあとに続いた。



「大丈夫ですか?」

「放っといて!」

女性は圭吾さんの差し出した手を、乱暴に振り払った。
圭吾さんはそんなことには構わずに、女性を抱きかかえて立たせ、身体についた土を優しく払った。



「放っといてって言ってるでしょ!」

「あ…膝、すりむいてますよ。
ちょっと待ってください。」

そう言うと、圭吾さんはバッグからティッシュを取り出し、傷の汚れをふき取って、絆創膏をぺたりと貼った。


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