Young days
『えっ?』


『無いんでしょ?忘れ物なんて。』


感の鋭い衣千華には敵わない…伊織はそう思った。


『…衣千華、待っててくれたの?』


『そりゃそうでしょ〜。この道を1人で帰るなんてあり得な〜い。みんなも待つって言ったんだけど…それが嫌で1人で帰ろうとしたんでしょ?でも、たまには2人もいぃと思うよ〜。まぁ、私じゃ物足りないかッ。ハハハ〜。』


そう言って伊織の腕を掴んで笑った。


『…ありがとう。』



『にしても、顔緩みっぱなしだったね〜流唯。ありゃ、流石にキツイわなぁ〜。』



伊織は決して誰にも流唯の事が好きだと打ち明けた事は無い。それでも、流唯以外の4人は全員承知の事実である。



衣千華の言葉に何も言えずにいる伊織。



流唯への気持ちを1度も聞かれた事のない伊織にとって、それは認めたも同然だった。


『ウチらってさ〜、いっつも6人じゃん?』


『…うん。』


『恋バナとかする間も無かったよね。』


『え?』


『だってそうじゃん。兄弟って普通恋バナしないでしょ?ウチらお互い1人っ子だから…まぁ良く分からんないけどさ。私はアイツらの事ずっと友達ってゆうか、ホント仲の良い兄弟みたく思ってきたとこあるから。ユヅが果奈に告ったって聞いた時、この世から海が消えるくらいの衝撃受けたもんね。』


伊織は目を丸くして大きく何度も頷いた。
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