Livre magie〜桜色の魔女〜
三 胸の高鳴り
エリカに手を包まれたまま、何も考えることが僕はできなかった。しかしその時、地面がまるで地震が起きているかのように激しく揺れる。

「きゃあ!」

「うわぁ!」

僕たちは全員、その場に立っていられなくなり、地面に倒れてしまった。木々が大きく揺れ、木の枝が折れて落ちてくる。リオンが咄嗟に防御魔法を唱え、僕らは透明な膜に包まれた。

「一体、この地震は何なんですか!?」

怯えるエリカに、僕は冷静に「恐らく物の怪の仕業だよ」と答える。物の怪はさっき倒した一体だけじゃないんだ。だって遠くからかすかに物の怪の唸り声が聞こえてくるから……。

「つまり、物の怪のボスを倒さない限り、俺たちはこの小説の中から出られないってことか」

リオンの言葉に僕は頷く。さっきの物の怪はあまりにも弱い。もっと力を持った存在との戦いになるだろう。剣を持つ手に力が入る。

「なら、私も一緒に戦います!逃げてばかりはもう嫌なので」
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