出会いはアプリでした。
『お疲れ様でーす、小林さーん。
原稿持ってきました。』



「お、ありがとう。」



「演奏会に使うプロフィール原稿を持ってきて」と電話があったのは土曜日のこと。
事務の人って土曜も仕事なんだなって他人事に思った。



「うん、コレで多分大丈夫。
不備あったらまた電話すると思うけどよろしくね。」



『了解です。』



それじゃと帰ろうとエントランスに体を向ける。



「あ佐藤さん、俺の弟。」



外からやってきた1人の男性。
小林さんと同じ、スーツをピシッと着こなした男の人。



その人はえ?と顔をしながらやってきてとりあえず勘で口を開いた。



「小林弦太、奏太の弟です。
よろしく?」



奏太は小林さん(兄)だよね。
てか弦太って。



アプリの弦太は後ろ姿の写真だったし顔はみえなかった。
小林さん、少し前に「家族みんな弦楽器やってるんだ」って言ってたし。
同姓同名、趣味が同じとかそんな人あるのかな。



『あ、えっと。
小林さん?』
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