会長サマと、夢と恋。

「……おい、なんでちょっと笑ってんだよ」

「わ、笑ってないです」

「ウソつけ、調子乗んな」

「いっ、いたい、会長!」

今度はわたしの頬を遠慮なくつまむ会長。
おそらくひどい顔をしているわたしを見て、笑っている。

(楽しくて、幸せかもしれない)

なんだかわたしたちの距離が近づいて行ってるような気がして、嬉しくなった。

「……ったく、お前が電話に出ないから、探して時間食っちまった。仕事に戻る」

「え、生徒会の仕事中だったんですか⁉︎ だったらわたしも……」

「いや、今日は力仕事もあるから川西と伊藤と高沼の四人で平気だ。じゃあ、気をつけて帰れよ」

「は、はい」

時計を確認して、会長は教室を出て行った。

足音はすぐに聞こえなくなって、会長が走って生徒会室に戻って行ったことがわかる。

(わたしに、それだけ言うために、探しにきてくれたってことかな……)

会長の一挙一動で、うぬぼれる気持ちが強くなってしまう。
その場に座り込んで、考えるのはもちろん、会長のことばかり。

「あ」

そこまで考えて、大事なことを聞くのを忘れてしまったことに気づく。

……今日で一学期が終わって、明日から夏休み。学校に来る用事なんて今のところない。
ここまで、夏休み中の勉強会の約束なんて一切していないから、もしかしたら。

最悪の場合、二学期になるまで、岸会長に会えないってこと……⁉︎


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