会長サマと、夢と恋。
10.会長に、会えない日。
『勉強会やるから、お前の家行くから』とか、
『街の図書館集合』とか。
そんな連絡が来るんじゃないか、って心のどこかで期待して、……なんと夏休みに入ってから十日が過ぎた。
岸会長からそんな連絡が一切来ることもなく8月に入ろうとしていて。
ここまでのわたしの勉強の状況はと言うと、学校から出された宿題をほんの少し片付けただけ。
自分から「勉強会はやらないんですか」なんてやっぱり聞けなくて、かと言ってそれ以外は連絡できるような用事はなくて。
本当に二学期まで会えないんだなぁ、と思うとため息が出た。
『ピコ ピコ』
「‼︎」
ふとスマホが鳴って、飛びつくように確認しちゃう自分が嫌だ……。
アプリを開くと、メッセージが来ていたのは会長からではなく、マンガアニメ同好会のグループトーク。
『陽菜子、ネームはどう?』
アキからのその文章の下に、わたしが好きなキャラクターのスタンプ。
どう返そうか迷っていると、ミナミからもスタンプがきて、そこには「ムリしないでね」って書かれていた。
……二人には、ちゃんと謝らなくちゃ。
机の上に置いたノートをパラパラとめくる。
鉛筆のヘタな落書きだけど、この十日、勉強はそっちのけでネームばかり描いていた。
『暇なときでいいんだけど、家にこれるかな?』
そう送ると、しばらくして二人ともうちに来てくれることになった。
正直、少し気まずいところもある。だけどちゃんと、向き合わなくちゃいけない。