会長サマと、夢と恋。

夜の九時を過ぎて、スマホを握りしめながらベッドに突っぷす。

夏休み中だから夕飯もお風呂も早めに済んでいて、後は寝るまでの自分の時間。
本来なら夏休みの宿題なんかをやるのが一番なんだろうけど、今日はスマホをつけたり消したり、心が落ち着かない夜だ。

『いつも呼び出されてばっかりだったんだから、たまには陽菜子ちゃんから呼び出してみたら?』
『翻弄されてるばっかりじゃ、ダメだよ! 陽菜子からも積極的にならなきゃ』

……さっきから、アキとミナミの言葉が頭の中をぐるぐる回る。

そうは言っても、なんてメッセージを送ればいいんだろう。第一声は?

『お久しぶりです』
『お元気ですか?』

……なんか少し、堅苦しいかな。

『会長、夏休みはなにしてるんですか?』

……相手の行動を知りたがる女は引かれる、って雑誌で読んだ。

『勉強会はやらないんですか』

結局、この質問に落ち着くけど、やっぱり自分から勉強会を催促するしかないのかな。
でも、それはちょっとためらいがある。

ベッドに寝転がりながら、メッセージアプリの画面を開いて、文字を打っては消して……。
時間だけがただ過ぎていくなぁ、とため息をついたとき。

『ピコ ピコ』

「わっ!」

手の中のスマホがいきなり音を立てて、あわてて飛び起きる。
画面の上側に通知されたメッセージを見ると、

(……川西先輩?)

そこに表示されていた差出人は川西先輩の名前で、さらに「陽菜子ちゃん元気? 突然で申し訳ないんだけど、陽菜子ちゃんの……」という文字。
この先はアプリからじゃないと見れないから、素直に川西先輩とのトーク画面を開く。

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