会長サマと、夢と恋。
図書館の自習スペースの、なるべく周りに人がいないところに座る。
この図書館の机は窓側にくっついていて外を見ながら勉強するタイプだから、必然的に会長とも横並びになる。
いつもは机を挟んで向かい合うことが多いから、今日はより近くて緊張しているわたしに、岸会長は小声で話しかけてきた。
「で、どこまで進んでる?」
「え?」
「学校の課題だよ。だいたいは手をつけたんだろ?」
「えーっと……」
目をそらしながら、持ってきた課題の山を見せると、会長がさらに小声で「ウソだろ」と呟いた。
「なにやってたんだよ、7月中は」
「……マンガの話作りとか、です」
わたしの話を聞いた会長は無言で目を抑える。
「で、でも、これから頑張ってやります!」
「……貸せ」
顔をあげた会長は課題の山を自分の方へ引き寄せると、すごい勢いでそれぞれのページをめくっていった。
そして、ところどころに付箋を貼っていく。
全て見終わったらしい会長はわたしに課題を返すと、咳払いをひとつ。
「これ、俺が付箋貼ったところだけ、いま解け」
「いま、ですか⁉︎」
「でかい声出すなよ。そんなに量はない」
そう言われて渋々、問題に目を落とすけど。
「あれ……?」
付箋が貼られた箇所は、主に苦手な数学。
それも、パッと見て解けないものばかり。
わからない問題を飛ばして次の問題に移るけど、それもやっぱりわからない。