会長サマと、夢と恋。
「……?」
頭を抱えたわたしに、会長は口の端を上げて言った。
「解けないだろ」
「はい……習いました? こんなの」
「アホ、期末に出てただろ。……お前が一人で解けなそうなやつ、ピックアップした」
「えっ?」
たしかに全部、見事に解けなかったけど、なんでそんなことを?
首を傾げたわたしに会長は説明する。
「家で一人でやっても解けないようなやつ、今日俺と片付けたほうが悩まなくていいだろ」
「なるほど……」
「お前の苦手な問題の傾向は、だいたいわかってる」
さすが、教師志望。
さっそく問題に取りかかろうとしている会長の横で、あわててシャーペンを持つけれど。
(わたしのこと、よく見ててくれたんだな……)
もちろん、わたしは「生徒」だから、そんなふうに対策を立ててくれるのは特別なことではないのかもしれないけど。
それでもやっぱり、嬉しいと思ってしまう。
「これはさっき言った方程式だ。んで、ここに代入」
「あ、ほんとうだ……解けた」
「ん。覚えれば、簡単だろ」
それに、会長がわたしが問題を解くたびにほんの少しだけ嬉しそうにしてくれるから。
久々に勉強の楽しさみたいなものを思い出した。