会長サマと、夢と恋。


びっちり2時間ちょっと、岸会長が指定した問題を解いて。
午後3時を少し過ぎたところで……わたしのお腹が盛大に鳴った。

会長はなにも反応しないから、もしかして聞こえなかったのかな、と安堵したのもつかの間。

「ふっ……。どんだけ腹減ってんだよ……」

押し殺したような、会長の笑い声。

「……っ!!」

この距離で隣にいて、聞こえていないはずがなかった。一気に顔に熱が集まる。

「い、いや、だって……」

必死に言い訳しようとしたタイミングで、近くの席に人が座る。
気づけば、わたしたちが来たときよりだいぶ自習する人が増えていた。

「……混んできたな。迷惑になるだろうし、行くぞ」

「は、はい」

広げていたテキストや問題集を手早く片付けて、岸会長が立ち上がる。
スタスタと歩いていってしまう会長をあわてて追いかけた。

勉強がひと段落ついたから、やっぱりもう解散なのかな。
そう思って肩を落としながら図書館を出たところで、こっちを振り返った会長。

「お前、このあと予定は……って、どうせ暇だろ?」

「何ですかその決めつけ」

「暇じゃないのかよ」

「ひっ、暇です! すごい暇!」

「じゃあちょっと付き合え」

そう言って会長はまた先を歩いていってしまう。

(な、なに? 付き合うって……)
小走りで後を追いかけると、だんだん駅前に近づいて、ファッションビルの通りに入っていく。

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