会長サマと、夢と恋。


やがて会長は、パステルカラーの可愛らしいカフェの前で足を止めた。

「……これ」

店の入り口に出ている看板には、「県内初上陸! もちもちパステルパンケーキ」の文字と、フルーツがたっぷりのった美味しそうなパンケーキの写真。
たしか、駅前にも大きく看板が出ていたはずだ。

「会長?」

「これはどうだ、腹減ってんだろ、お前」

なぜか片言になった会長は、少し顔を赤くしていて。
きっと会長がこのパンケーキを食べたいんだな、ってわかった。

わたしが頷くと、無言でお店に入っていく会長。
お二人さまですか? と聞かれて、丁寧に「はい」と答えている。

席に通されてメニューを開いた会長の……口元が緩んでいる。

普段無愛想な会長の、意外な一面。
実は甘党だって、知っている人はきっと少ないよね?

ベリーとチョコのパンケーキを一つずつ。
悩んでいた会長に「シェアしませんか?」って提案したら、わずかに目を輝かせていた。

「会長、このお店、知ってたんですか?」

「……駅で看板見て、食いたいって思ってた」

「こういうところ、男性だけじゃ入りづらいですもんね。でもよかった、定休日じゃなくて」

「それは昨日、調べてー……」

そこまで言いかけて黙ってしまった会長は、お店に入るときより顔を赤くしている。

……会長がいま、わたしをパンケーキのお店に誘ってくれたのは、わたしのお腹が鳴ったからじゃなくて。

もしかして、昨日会う約束したときから、そのつもりでいた、ってこと?


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