会長サマと、夢と恋。

ただ単に、会長がパンケーキを食べたかったから、付き合わされたのかもしれないけれど。

そうやって事前に行く場所を決めてくれていたのなら、勉強会って言うよりはなんだかやっぱり「デート」に近い気がして。

(胸のあたりが、ムズムズする)

目の前にいる会長のことが好きで、再びそう伝えてしまいたい衝動に駆られた。

……再告白するのは、今じゃない。
やがて運ばれてきたパンケーキを食べてわずかに目を細める会長が、次にこういうお店に行くときもまたわたしを誘ってくれるといいな、と願った。




お店を出て、満足そうな顔の岸会長と並んで歩く。
時間はもう夕方だけど、夏だからまだ全然明るい。

わからない問題があったら写真撮って送れ、と言って会長はメッセージアプリの新しいアカウントを教えてくれた。アイコンが未設定なのは会長らしい。

「二学期入ったらすぐ、選挙だな」

「そうですよね……」

「立候補するのか?」

まだ迷いはあるけど、生徒会に入ることは会長に告白したときに自分で決めた目標の一つだ。
会長の問いにひかえめに頷くと、その口元に小さく笑みが浮かんだのがわかった。

「できる限り、サポートはする」

「はい。ありがとう、ございます」

自信はないけど、無理でもない気がしている。他に候補者がいないのが一番だけど。

でも、わたしが頑張ることを岸会長も喜んでくれている気がする。
それに会長のサポートがあるなら凄く心強いよね。

「……」
「……」

いろいろ考えているうちに気づけば待ち合わせた時計台の前に戻ってきて、立ち止まる。
わたしも会長も、なんとなく無言のまま。


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