会長サマと、夢と恋。
……やっぱり、今日はもう解散だよね。
会長を引き止められるような行き先の提案もできないから、仕方ないと思っていると。
「悪いな、『家庭教師』とか言っておきながら、全然勉強見に行ってやれなくて」
振り返った会長がそんなふうに謝ってきたから、首を振る。
「……い、いえ、会長、忙しいですし。今までサボってましたけど、わたしも自分でできるところまでやってみます」
わたしの言葉を聞いて頷いた会長は、続けて口を開いて。
「あと、それから……」
そう言いかけて、言いづらそうに口をつぐんで、目をそらして。
その様子を不思議に思って見ていると。
「……今日のお前、髪とか雰囲気、いつもと違う感じで……悪くないな」
ようやくこっちを向いてボソッと呟かれた言葉に、……耳を疑った。
会長の大きな目は、たしかにわたしをとらえている。
「……かっ、会長、そんなこと言うんですか⁉︎ らしくない!」
照れ隠しでそう言ったけれど、本当は嬉しくて、飛び回ってしまいそうになるのを抑えるのに精一杯。
「らしくないって……お前、俺をなんだと思ってるんだよ」
「……俺様ドSの甘党?」
「おい、それが好きな男に対して言う言葉か」
「‼︎」
あまのじゃくな言葉ばかりのわたしに、まるで反撃するように爆弾を落としてくる会長。
目を見開くと、岸会長は面白そうに笑っていて。
(かっ、からかわれてる……⁉︎)
自分は最悪な弱みを握られてしまっているんだな、と自覚した。