会長サマと、夢と恋。
11.会長と、不安。
「おい、ひかり……わかったから、離せ」
「あ、ごめんなさい! でもお久しぶりですね。棟が違うと学校ではなかなかお見かけしません」
「確か情報学科だったよな。普通科とは完全に校舎離れてるからな」
「はい。でもわたしは全校集会とかで岸さんのこと見てましたけどね!」
親しげなふたりの会話に、全くついていけなくて立ち尽くすわたし。
どうやら彼女は同じ学校の人みたいで、しかもわたしたちのいる普通科より偏差値の高い、情報科学科の人、らしい。
会長の言う通り、普通科とは違う、情報科学科と英文学科の人たちは別棟に教室があって。
パソコンの授業とかがない限りは、わたしたちがそちらの棟に行く機会は少ない。
(でもこの顔、やっぱり見覚えがある。どこで見たんだろう……)
「こうやって話すの、お姉ちゃんと岸さんが仲よかった時以来ですよね」
「……おい、その話は……」
「あっ、ごめんなさい、つい」
……その会話で、わたしはやっと気づいた。
長いまつ毛に彩られた、意志の強そうな目。
さらさらの黒髪、すらっとした体型。
生徒会副会長であり、岸会長のことでわたしに「宣戦布告」をしてきた長沢さおり先輩に、似ているんだ。
だから彼女とははじめて会った気がしなかったのか、と納得する。
そして、『お姉ちゃん』ってことは。
「もしかして、長沢先輩の……?」
思わず呟いた言葉で、彼女はようやくわたしのほうを見た。
長沢先輩と同じ目で見られると、つい怖気付いて肩を強張らせてしまう。