会長サマと、夢と恋。
12.会長と、涙。
高校生になっても今までと同じで、夏休みはあっという間に終わってしまった。
その間、岸会長はさらに忙しくなってしまったみたいで。
勉強会は行われず、わからない問題をメッセージのやりとりで教えてもらうだけだった。
そして始まった二学期、集められた生徒会室には少しだけ不穏な空気が漂う。
それぞれ別の用事で遅れてくるという会長と長沢先輩は不在だ。
「……まさか、さおりちゃんが妹を立候補させようとしてたなんてね」
口元に手をあてながら、川西先輩が真面目な顔でつぶやく。
他の役員の先輩方も、どこかむずかしい顔をしていた。
「岸くんはどう思ってるのかな。……ああでも、進路相談でそれどころじゃないか」
「……進路相談?」
「うん、なんか受験の希望を急に変更するみたいで。今もたぶん、担任の先生ともめてるよ」
「え……」
なにそれ、聞いていない。
(……まぁ、そもそも会ってもいないし、深い関係なわけでもないから話してもらえなくて当たり前か……)
夏休み中、忙しそうだった理由はそれか、って納得する。
でも、会長、進路変えてしまうの?
あのとき「行きたい」って話してくれた大学には、行かないのかな……?