会長サマと、夢と恋。
顔をあげると、真っ直ぐわたしのほうを見ている川西先輩がいて。
彼は口元をかくしながら、
「……俺なら陽菜子ちゃんに、そんな顔させないよ。岸くんなんかやめて、俺にしなよ」
って、言った。
手で隠れているのと、西日が強いのが相まって、よく川西先輩の表情が見えない。
いま、何を言われているのか。
また自分が自意識過剰なだけなのか。
真っ白になった頭で、考えても整理ができなくて。
「えっ、と……川西先輩?」
「……とにかく、推薦人の件は、決心ついたらいつでも言って」
先輩はそう言い残して、足早に去っていった。
一人残された教室で、考える。
(い、意味がわからない……)
だって、あの川西先輩が、わたしなんかに。
確かに川西先輩はずっと優しかったけれど、それへみんなに対して同じことで。
特別な兆しみたいなものはなかった、はずだ。
そう思って、これまでの川西先輩とのやり取りを思い返していると。
(……あれ? 確か、あのときも、あのときも……)
自分の記憶の中で、あることに気づく。
確信はないけど、もしかしたら。
(だとしたら、今日の言葉は、何のために?)
わたしは生まれてしまった疑問を確かめるために、出ていったばかりの川西先輩の後を追いかけた。