会長サマと、夢と恋。
「高沼くん、会長に立候補するんだから、岸くんに頼めばいいじゃん」
ふたりの話に岸会長の名前が出てきて、立ち止まる。
すると……高沼先輩の口から飛び出したのは、驚きの事実。
「……実はもう、岸会長には頼みました。だけど、断られてしまったんです」
「え? 岸くんに?」
「はい。なんでも選挙の日……九月二十五日は、受験でそもそも学校にいないそうで」
……さっき、岸会長が先生と話していたこと。
確かに推薦入試は「今月末」だと言っていた。
それがまさか、生徒会選挙の日と被っていたなんて。
『悪い。……俺は、できない』
そう言って、わたしが推薦人をお願いしたときも断った会長。
そういう事情だったんだ。そもそも学校にいないだなんて。
(わたし、よく理由も聞かずに会長に文句を言ってしまった……!)
真実を知ってしまって冷や汗が流れるなか、川西先輩が言葉を返すのが聞こえる。
「……そうだったんだ。でも、それでも俺は、高沼の推薦人はできないよ」
「どうしてですか。……もしかして他に、誰かの推薦人をやるんですか?」
「……うん、たぶん……」
「かっ、川西先輩!」
……2人の会話を聞いていたら、いてもたってもいられなくなって、その場から飛び出していた。川西先輩も高沼先輩も、驚いた顔でわたしを見ている。