会長サマと、夢と恋。
「陽菜子ちゃん、どうしてここに」
「……川西先輩。高沼先輩の推薦人、やってください。わたしは、大丈夫です」
そう言って頭を下げると、慌てたような川西先輩の声。
「いや、俺は……」
「……川西先輩、本当は何を考えているんですか?」
「え?」
そう言って見上げると、……目をそらした川西先輩。
「何言ってんの、陽菜子ちゃん。俺は純粋にー……」
言いかけた先輩の右手は、彼の口元へ。
そこで、疑いが確信に変わってしまう。
「……川西先輩、橋本さんの推薦人やるんですか?」
そこで不安げに聞いてきた高沼先輩に、川西先輩は無言だった。
だから、答えるより早く、わたしが言う。
「……わたしの推薦人は、川西先輩にはお願いしません。だから、安心してください」
そう言い切って、逃げるみたいにそこから走り去った。
後ろで川西先輩が呼ぶ声が聞こえるけど、立ち止まらない。
このまま、岸会長に謝りに行こう。
そう思って階段を下りるけれど。
……会長はきっと、面接の準備や練習で忙しいだろう。
なにせこの学校始まって以来の挑戦、だもんね。
でもきっと、どんなに大変で凄いことでも、岸会長はやり遂げるだろう。
(だとしたら、わたしがやるべきことは、会長に会いに行くことじゃなくて……)
わたしは一度自分の教室に戻って、机の中から先日配られた「生徒会役員選挙立候補用紙」を取り出すと。
必要なところを書き込んで、その足で職員室へと向かった。