会長サマと、夢と恋。
「……やっぱり陽菜子ちゃんも出てくれて、嬉しい!」
わたしの前に並ぶ、ひかりちゃんが緊張を感じさせない様子で声をかけてくる。
「う、うん……頑張ろうね……」
正直、本当は倒れちゃいそうなぐらい緊張しているけど、精一杯なんでもない顔で答えた。
……演説は会長候補者から行われ、副会長、会計、書記、そして庶務の順に進む。
庶務は男女各一名だから、男子の候補者から。
そして二人以上候補者がいる場合の演説順はくじ引きで決めるんだけどー……
(よりによって最後……。ト、トリってやつ⁉︎)
くじの結果、ひかりちゃんが先だったから、わたしは全候補者の中でも一番最後になってしまった。
無駄に緊張する時間が長くなってしまった気がして、肩を落とす。
それに、岸会長はやっぱり不在のようで、開会式の現職会長あいさつは川西先輩が代わりに務めていた。
そして、各候補者の推薦人を務める人たちも集まってきて。
ひかりちゃんの推薦人、長沢先輩がわたしのすぐ近くに並んだ。
「……橋本さん、川西くんの申し出を断って、だれを推薦人につけたのかしら?」
変わらず高圧的な態度でこちらを見てくる長沢先輩に、あいまいな笑みを返す。
「えっと……急に具合悪くなっちゃって、あはは」
そう、今、わたしの隣には誰もいない。