会長サマと、夢と恋。

……わたしはあの日、推薦人の欄を空欄にして立候補用紙を提出した。

その時は何も言われなかったんだけど、後日、やっぱり推薦人を立てないと立候補が認められないと言われてしまって。
アキに頼み込んで、名前だけを貸してもらった。

もちろんアキに推薦人として演説をしてもらう気はなかったので、今は保健室で休んでもらっている。
本人は「少しぐらいなら、頑張って喋るよ?」と言ってくれたのだが、断った。

あえて誰にも正式な推薦人を頼まなかったのは、自分なりのケジメのつもりだ。
長沢先輩は「敵ではない」と思ったのか、それ以上なにも言ってこなかった。




今回の選挙は、各役職二名以上の候補者がいる激戦の年らしく、会長に立候補した高沼先輩も、副会長に立候補した七瀬先輩もどこか落ち着かない様子なのがわかる。

全校生徒の前で話すのって、こんなに緊張するんだ。

(普段、それをやっている岸会長はすごいな……)

そんなことをぼんやり考えていると、

「陽菜子ちゃん、」

それまで高沼先輩の横にいたはずの川西先輩が、いつの間にすぐ近くにいて。
すごく小声で、話しかけてきた。

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