会長サマと、夢と恋。
前の候補者が、順調に演説を終えていく。
それにしてもみんな、場慣れしていて気後れしちゃうぐらいだ。
中には予定時間を大幅に超えてペラペラと話す人もいた。
わたしの前のひかりちゃんも、いつもの様子で堂々と話し終えた。
袖から見ていたけれど、やっぱり長沢先輩と並ぶと美人姉妹で、観客の男子生徒なんかは頬を染めてウワサ話をしていた。
(ひかりちゃん、人気だろうなぁ……)
直前になって、足が震え出して。
逃げ出したい気持ちになるのをこらえる。
……やる前から、あきらめないって、決めたんだ……。
"生徒会庶務候補・一年三組、橋本陽菜子"
司会の人に名前を呼ばれて、勢いのままステージに出て行く。
手と足が一緒に出ている気がする。喉の渇きが止まらない。
他の候補者と違って推薦人も連れず、一人で現れたわたしに少しだけざわめきが起こった。
ステージの中心、演題の前に立って、マイクのスイッチを入れる。
全校生徒の目が、わたしの一挙一動を見ていて、落ち着くなんてできない。
震える手で、さっきもらったばかりの会長の台本を開いて……小さく息を吸った。