会長サマと、夢と恋。
「岸くん、なんでここに⁉︎ 受験は⁉︎」
驚いた顔の川西先輩が岸会長に聞いた。
「……終わってすぐ、急いで戻ってきた」
本来なら、受験が終わったら大学から直帰でよかったそうだ。
だけど、快速の電車に乗って、それから自転車を走らせて、会長は学校にきてくれた。
……わたしの、ために。
前の人の演説が押していたのと、順番が最後だったから、なんとかわたしの出番に間に合ったみたい。
「会長……」
わたしが小声で呼ぶと、会長は目線だけをこちらに寄越した。
こうして視線が交わるのも、なんだか久しぶりだ。
「……たくさん、ごめんなさい。頼りっぱなしだったのも、酷いこと言ったのも……それから、」
「もういい。俺も、突き放して悪かった」
そう言った会長は、めずらしくわたしから目をそらす。
わたしはその背中に向かって言葉を続けた。
「……台本、ありがとうございました」
「……ああ」
「あと、本当に……今日、きてくれて嬉しかったです」
……こんなにも感謝しているのに、こんな簡単な言葉でしか伝えられないのがもどかしいくて、モヤモヤしていると。
「……俺は、お前の専属だから」
ふと、会長が何かをつぶやいた。
それはわたしの都合のいい言葉に聞こえたけれど、「まさかそんなわけない」って自分に言い聞かせて、聞き返すことはしなかった。