会長サマと、夢と恋。
「それよりお前、なんで川西の推薦断ったんだ」
「えっ」
忘れかけていた問題が、岸会長の言葉で頭に戻ってくる。
会長は川西先輩から、「推薦人を申し出たけど、わたしに断られた」ってだけ、聞いているみたい。
……わたしが川西先輩の申し出を断った理由。
一つは本当に、高沼先輩が困っていたから。
そして、もう一つはー……
「……川西先輩が、変なことを言うから、です」
「は?」
「岸くんなんてやめて俺にしなよ、って言われました」
「はぁ⁉︎」
慌てたような顔の会長が、川西先輩のほうを見る。
……黙ってそのまま立ち去ろうとしていた川西先輩は、視線に気づいて気まずい表情を浮かべた。
「川西、お前まさか、こいつのこと」
「……川西先輩、どうして本当は思ってもないことばかり言うんですか?」
「……‼︎」
どうやら本気にしたらしい会長をよそに、わたしは川西先輩に問い詰める。
先輩は目を見開いたあと、いつもみたいに笑った。
「陽菜子ちゃん、やだなぁ。俺は本気でー……」
そう言いながら、その右手は口元に。
「……それ。川西先輩、ウソをつくとき口元に手をあてる癖あるからわかります」
「……‼︎」
わたしの言葉に、川西先輩本人だけでなく、隣で聞いていた岸会長も驚いているのがわかる。