会長サマと、夢と恋。
「岸くん、……わかってたんだね」
「中学の時からあれだけ恨めしそうな目で見られて、気づかないわけがない」
岸会長と長沢先輩が付き合っていた頃の話を、川西先輩はとても細かく話してくれた。
……2人のことにあれだけ詳しかったのは、羨ましいって気持ちがあったからだったんだ。
苦虫を噛み潰したような川西先輩をよそに、岸会長はさらに口を開く。
「……で? こいつの気持ちに気付いてて、好意を利用するのはどんな気分だ」
「え……」
会長の言葉で、分厚いカーテンが少しだけ揺れる。
……そこから静かに姿をみせたのは、なんと長沢先輩だった。
明らかに怒っている岸会長と、うつむく長沢先輩。
「何が目的だったんだ」
という会長の問いに、彼女は最初は沈黙していたけれど。
やがて、聞き取れないほどの小さな声で、
「岸くんと橋本さんの仲を、壊そうとして……川西くんに頼んだの」
って言った。