会長サマと、夢と恋。

つまり、川西先輩に好意を向けられれば、わたしが岸会長を諦めて川西先輩のことを好きになるって思われたんだ。

黙って聞いていたけれど、ついにいてもたってもいられなくなって、口を開く。

「わたし、そこまで単純じゃないです……」

「……」

「長沢先輩、大学に行ってからも岸会長のこと頑張るって、真っ直ぐに宣戦布告してくれたじゃないですか! それなのに、こんなこと」

あの日、長沢先輩の気持ちを聞いて、「この人は本気なんだ」って思った。
だから、影の小細工とか、ずるいことは抜きにして、正々堂々と戦いたかったのに。

「……もしかして、ひかりちゃんも、長沢先輩が何か指示して……」

「ひかりは関係ない! あの子は純粋に、あなたと友達になれて喜んでた」

その言葉に安堵したけれど、長沢先輩への不信感は消えない。

すると、岸会長がいつものようにため息をついて、「さおり」と長沢先輩の名前を呼んだ。

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