会長サマと、夢と恋。
まるで穴が開いてしまうんじゃないかってぐらい、じっと長沢先輩のことを見つめた岸会長は、……ふっと微笑んで。
優しい口調で、話し始めた。
「俺はあのとき、ほんとうにお前のこと、好きだったよ。お前が実は俺のことを好きじゃなかったって知ってからも、しばらく気持ちは消えなかった」
「……岸くん」
「でも、……それは全部、過去のことなんだ」
会長は一呼吸おいて、そして真面目な顔に戻って。
「これから先、……例えば同じ大学に通って、長い時間を一緒に過ごしたとしても、俺がお前のことをまた好きになることはない。ごめん」
……会長はキッパリと、長沢先輩の好意を拒絶した。
でもそれは、長沢先輩が嫌なことをしたからとか、そんな理由じゃなくて。
しっかり考えて、決めた答えなんだとわかる。
その言葉を聞いた長沢先輩は、……静かに涙を流した。
しゃくり上げたり、みっともなく縋ったりしない、とても綺麗な涙だと思った。