会長サマと、夢と恋。
分厚い眼鏡が邪魔だけど、それでもやっぱりカッコいい。
性格は最悪……だと思ってるけど、最初に話した時のようなトゲはなくなったと思う。
そして、何よりー……。
「ここにxを代入して、んでさっきも使った方程式を当てはめて……」
この魅惑的なイケメンボイス。
低くて、甘くて、耳に残る。
こんな声で数学を説明されても、正直、頭には入らない。
「……おい、聞いてんのか」
「へっ、は、はい!」
「じゃあ今説明したやつ、解いてみろ」
「え……えーっと……」
テキストの、岸会長が指差した部分を見る。
xがどうとか、言ってたよね。
思い出しながらノートにシャーペンの先を置く、けれど。
「……あれ?」
ちっともわからなくて、誤魔化すように笑うと、会長はため息をついた。