会長サマと、夢と恋。
わたしと岸会長の定番の勉強場所、図書室。
いつもは誰もいないことのほうが多いのに、今日は生徒がちらほらといる。
わたしのほうが先に着いたみたいで、とりあえず勉強用の席に腰かけると。
「あのー……」
「……え、わたしですか?」
とつぜん、三年生らしき女の先輩たち二人組に声かけられて、体がはねる。
「うん。……あのさ、岸くんと付き合ってるの?」
「……へ?」
その先輩たちの質問の意味を理解するまでに、数秒かかった。
「い。いやいや、そんなわけないです!」
あわてて否定すると、その二人組は顔を見合わせて。
「でも、仲いいよね?」
「よくないです……!」
「だって、岸くん直々のスカウトなんでしょ?」
「それは、わたしの事情もいろいろあって、」
「でも、一緒に帰ったりしてるって、聞いたよ?」
どんどん質問されるけど、どれもこれも誤解で、わたしと会長の間に深い意味はない。
そう伝えてるつもりなのに、二人組のうち一人、気の強そうな先輩が納得いかないとでも言うみたいに同じようなことを聞いてくる。
……それに、もう一人の大人しそうな先輩はなにも言わずにずっとわたしの方を見ていて。
その目は、さっき話したばかりの長沢先輩と同じだった。