会長サマと、夢と恋。
(ど、どうしてこうなった……⁉︎)
「お邪魔します」
「あら、陽菜子あんた、こんなにカッコいい彼氏がいるならもっと早く言いなさいよ〜!」
「お、お母さん……! 彼氏じゃ」
「はじめまして。岸といいます。これ、お母さんもよかったら食べてください」
「……! 息子ができた気分……」
「べ、勉強! 見てもらうだけだから!」
シュークリームが入った袋を差し出した会長の控えめスマイルにやられてしまったらしいお母さんは、大人しく退散した。
そう、岸会長が提案した勉強場所は、なんとわたしの家!
……もちろん、最初はやんわり断った。
だけどそれを聞いた会長が、「俺が家に行ったらまずいのか」なんて的外れなことを言ってきたから、もうわたしに拒否権はない。
同じ学校の人に見られないように、わたしが先に帰って、その少し後に岸会長が家にくる作戦をとった。わたしの方が家で会長が来るのを待ってる状況になるからなんかイヤだ……!
「な、なんかすみません、母が」
「これから何回か来るんだ、そう思わせといたほうが都合いいだろ」
そうシレッと言って私の部屋に入った会長は、部屋を見回すわけでもなくテーブルの前に座った。
「すみません、部屋汚くて」
「どんな部屋だろうが勉強するのに関係ないと思うけど」
「は、はい」
「ほら、やるぞ」
渋々返事をすると、会長はうなずいて。
カバンから一冊のノートを取り出して、わたしに差し出してきた。