会長サマと、夢と恋。
「え、もう休憩ですか⁉︎」
「昼飯食い損ねたから腹減ってんだよ。……なんだ、休憩したくない、なんて案外やる気だな」
「そういうことじゃ、」
「ん」
自分でシュークリームを頬張りながら、もう一つの袋を私に差し出す。
「ありがとう、ございます……」
岸会長、甘いもの好きなのかな。
てか、わたしも一応女子だけど、全然普通に喋ってるじゃん。
女子の家にためらいなく来て、母親のハートを掴んで。なんか、慣れてる感じだ。
「会長って、女性慣れしてます?」
「何だよそれ。お前、自分が女として見られてると思ってるのか?」
「ひどい!」
なんだか最近は話してて楽しい、って思ってしまうのは、私の錯覚かなぁ。
「……それにしてもお前の部屋、本が多いな。漫画も、小説も」
シュークリームを食べ終えた会長が私の部屋の本棚を見て呟く。
じっくり見られると恥ずかしくて、私はうつむきながら「好きなんです」って答えるしかできなかった。
「ああ、それで、マンガアニメ」
「……」
「んじゃ、廃部にならないよう、やるぞ。勉強」
パッと顔を上げると、岸会長は真面目な顔でペンを持ったところだった。
てっきり、馬鹿にされるかと思ったのに。
本当にわたしのために動いてくれてるって感じがする……。
「……わ、わたし、お茶入れ直してきますね! すっかり温くなっちゃったし……!」
赤くなっているであろう顔を隠すように勢いよくその場を立つと、いつもそこにない会長のカバンに足を引っ掛けてしまった。
「わっ……!」
よろめく体に、大きな手の温もり。
「……!」
わたしを支えてくれようとした会長ごと、……その場に倒れ込んだ。