会長サマと、夢と恋。

その質問に、書記の三年生、篠塚玲奈先輩が答える。

「あー、さおりちゃんと岸くんでしょ? そんな噂聞くよねぇ」

「えっ⁉︎」

驚いて思わず声を出しちゃった私に、視線が集まる。
庶務の二年生、普段はクールな高沼文也先輩もさすがに驚いたような顔をしていた。

たしかに二人はお似合いで、長沢先輩は好意を持っていそうだけど、岸会長が誰かと付き合っていたなんて想像ができない。
やっぱりただの噂かな、なんて話が終わりかけたとき。

「あー、てか、付き合ってたよ。俺、中学んときあいつらと塾一緒だったもん」

会計の三年生、伊藤涼先輩が、確信的な情報をつぶやいた。
その場にいた全員が、声を上げる。

「えっ、嘘でしょ⁉︎」

「本当だって。俺らの通ってた塾、市外だからこの学校に進学したやつ少ないけど、その塾にいた同級生はみんな知ってたよ」

「噂、本当だったんですね……」

「……」

「まあ、納得だけど……ちょっとワケありの生徒会だった、ってわけね」
「何があったんでしょうね」

「さおりちゃんは未練タラタラに見えるけどね……。って、陽菜子ちゃん、それ逆!」

篠塚先輩に指摘されて、自分の手元を見ると、裏表紙を一番前に重ねてホチキスを留めてしまっていた。

「わ、す、すみません!!」

あわてて針を抜いて、正しく閉じ直す。
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