会長サマと、夢と恋。
「お前、今日はおとなしいのな」
「……え?」
テスト前最後の勉強会。
そう声かけられて顔をあげると、会長はじっとこっちを見ていた
。
「あ、あの」
「ん?」
(会長は、長沢先輩と付き合ってたんですか)
聞いてみたい、けど聞けない。「関係ないだろ」って言われるのが想像できるから。
「……全然進んでないけど」
さっきから同じページを開いたままの問題集。
会長はペンを置いて、眼鏡をはずした。
会長の大きな瞳が、わたしを映す。わたしはどうしても、その視線に弱いんだ。
「勉強に集中できない理由は」
「……」
「言っとくけど、五十位以内に入れなかったら、もう勉強教えないからな」
「五十位って……厳しすぎません?」
「最初に言っといただろ」
「そうですけど~……」
そもそも五十位なんて、やっぱりハードル高すぎだよ……。
もともと百七十二位のわたしが一気に五十位なんてとったら、カンニングを疑われるレベルじゃないかな。
「……おい。チョコとイチゴは、どっちが好きだ」
「はい?」
いきなりの、それまでの会話の流れとは関係ない質問に首をかしげると、岸会長は自分のカバンから何かを取りだした。
「クッキーですか?」
「今日の昼、購買で買った。好きなほう選べ」
会長がテーブルの上に置いたのは、透明のラッピングにそれぞれ五枚ずつ入ったクッキーの袋。