会長サマと、夢と恋。

「え、わたしのぶんも買っておいてくれたんですか?」

「……買い過ぎたんだよ。食べたことないのか?」

「はい……」

 ふと、昼休みに購買の列に並んでる会長の姿を想像した。
きっと、選ぶのは菓子パンと、クッキーと……甘いものばかりなのかも。

「どっちもおいしそうですね」

「どっちもうまい。別に、どっちか、って決める必要ないよな」

 会長は袋を二つとも開けると、ティッシュを引いてその上にクッキーをのせた。

「食べ終わったら、ちゃんと勉強しろよ」

 すすめられるまま食べたクッキーは、イチゴは甘くて、チョコは少しほろ苦い。
(なんだか、岸会長みたい?)

「ありがとうございます、おいしいです」

 まるで自分が作ったかのように満足げに口の端をあげた会長は、

「まぁ、飼い犬に餌付けは必要だよな」

 と言って、自分もクッキーを食べた。

「なんですかそれ!」

「はは、冗談だよ。俺が食いたいから買ったの」

 生徒会長は、毒舌で、でもわりと優しい部分もあって、甘党。
 わたしだけが知っていることだといいな、とぼんやり思った。

 ~♪

 クッキーを食べ終えて、勉強を再開しようかと意気込んだころ、部屋に流れた着信音。

 わたしのものじゃないから、会長の携帯だ。画面を確認した会長は少しだけ眉をしかめて、電話に出た。

「……もしもし」

 さすがに相手の声は聞こえないけど、なんだか会長、機嫌が悪そうな気がする。

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