会長サマと、夢と恋。

「今はもう、学校にはいない。……ああ、その資料は生徒会室にある。頼めるか」

 生徒会の誰かかな。川西先輩かもしれない。
……人の電話、気にするなんてよくないよね、と問題集を開いた、そのとき。

「明日は手伝う。悪いな、さおり」

「‼」

 岸会長の口から聞こえたのは、「さおり」という名前。

 さおり、って……長沢先輩のことだよね。
 電話の相手は長沢先輩で、用件は生徒会の仕事のことで、でも。

〝あー、てか、付き合ってたよ。俺、中学んときあいつらと塾一緒だったもん〟

 この間、伊藤先輩が言っていたことを思い出す。
呼び捨てで呼ぶぐらいだもん、二人は、やっぱり……。

 電話を終えた会長が、眼鏡をかけ直してわたしのほうに向き直る。

「悪い、生徒会の連絡だった。続けるか」

「会長って……」

「ん?」

「な、長沢先輩と、付き合ってたって、本当ですか」

 勢いで出てしまった質問に、会長が驚いているのがわかる。


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