会長サマと、夢と恋。


……実は私は、ファンだと言いながら岸会長のことを遠目でしか見たことがなかった。

体育館のステージ上で挨拶する遠い姿、学校の広報に載っている白黒の写真。

分厚そうな黒縁の眼鏡をかけている会長はどんな顔をしているのか……今まで間近で確認しようとしたことはない。

だってほら、わたしが好きになったのは、会長の「声」だから。

だから会長がどんな顔をしていても関係なかったし、むしろハッキリと顔を見て自分の中の勝手なイメージを壊してしまうほうが怖かった。
だけど……。

予想を超えた見た目の整い具合にびっくり。
もし会長が声優だったなら、アイドル声優枠でも全然いける。

うちの学校の生徒会でカッコいいと有名なのは、副会長の川西先輩のほうだ。
川西先輩は気さくでファンサービスも旺盛らしく、女子生徒の中でファンクラブのようなものまである。

だけど、岸会長のことをカッコいい、と言っている声はあまり聞かない。
……絶対、眼鏡で損してる。


〝陽菜子がイケボだって言ってた、生徒会長いるじゃん。話聞いてくれないかな〟
〝会長のほうがマジメそうだし何とかしてくれそう〟

ふと、アキとミナミが言っていたことを思い出した。
マンガアニメ同好会存続のために、生徒会に直談判。

生徒会の人間……しかも、会長と直接話せる機会なんて、そうそうないはず。
これって、チャンスなのでは?


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