会長サマと、夢と恋。
「……どうだ、調子は」
「わ、悪くない、と思います!」
「そりゃよかった」
思いがけず会えたことにテンションが上がってしまったわたしを、苦笑いで見る会長。
(なんか、疲れてる?)
「会長、目の下すごいですよ?」
わたしが目の下のクマを見てそう言うと、会長は眼鏡を外して自分の目元を触った。
「あー……自分じゃわかんねぇ」
「そりゃ、触ってわかるものじゃないと思いますけど……。徹夜ですか?」
「まぁな。俺は今日明日が苦手科目だ」
会長の苦手科目、というと国語だっけ。
たしかに言葉遣いとかあんまり達者じゃないもんね、なんて言ったら怒られるだろうけど。
「なぁ、お前、甘いもの持ってないか」
「え?」
唐突にそう聞かれて、カバンをあさる。
朝、アキにもらったチョコレートが一粒あったから、それを渡すと会長はすぐにそれを口に含んだ。
「……美味い。助かった」
「‼︎」
な、なに、これ。
……会長の顔、「ふにゃ、」ってしてる……!
まるでエサをもらって喜ぶペットみたい。
でも、「犬」はわたしのほうだったはず!
(会長、よっぽど疲れてるんだな……)
岸会長のこんな姿、もう二度と見れないかもしれない。