会長サマと、夢と恋。
めずらしいものを見た! って気持ちと、お疲れ気味の会長を心配する気持ちが半分ずつ。
もっとお菓子持ち歩いていればよかったな、ってちょっとだけ後悔してると、川西先輩もやってきた。二人は流れで一緒に帰るみたい。
「なに、岸くんちょっとご機嫌だね」
「糖分補給した。おい、気をつけて帰れよ」
わかりづらいけど、少しだけテンションが上がったらしい会長がわたしの帰りを心配してくれてドキッとする。
こっちに手を振った川西先輩と、岸会長の後ろ姿を見送ってわたしも帰路についた。
家に着くと、帰宅が早いことを知っていた母から「買い物に行っておいて」との書き置き。
(一応、明日もテストなんだけど……。でもまあ、明日は大丈夫かな)
そんな余裕な気持ちで、向かったスーパー。母のメモ通りの食材をカゴに入れていく。
「小麦粉、……っと、あった」
切らしていたらしい小麦粉を手に取って、何気なくみた裏面。
『甘いもの持ってないか』
ふと、さっきの岸会長の顔が頭をよぎる。
(……会長への、お礼になるかな)
そう思い立ったわたしは別のコーナーへ移動して、頼まれてもいないものをカゴに入れる。
勉強も順調、そして、はじめての恋。
完全に浮かれていたわたしは、この思いつきのせいで後々後悔することになるなんて、思ってもみなかった。