会長サマと、夢と恋。
晴れてテストも終わって、みんなが解放された最終日の放課後。
家庭科も国語も、出来は悪くない。
国語なんて、時間があまったから最後の方は少し寝ちゃったぐらいだ。
晴れ晴れとした気持ちで体を伸ばしたとき、「お昼を食べてから生徒会集合」のメッセージがきた。
(やった、会長に会える!)
テストの手ごたえの報告もできるし、なにより……。
わたしはカバンの中にしのばせてきたものをチラッとみて、あることに気づく。
午後まで生徒会の仕事があるとは思ってなかったから、お昼ご飯、持ってきてない。
今日は購買も休みだ。
近くのコンビニに行くよりは家に帰ったほうが近いわたしは、会長に集合時間を聞いて、「その時間には間に合うように行きます!」と返信した。
家にはパンぐらいしかなくて、急いで食べて学校に戻ったけれど、生徒会室にはすでに、家庭の用事で不参加らしい長沢先輩以外の役員全員が集合していた。
「……雑用のくせに、最後かよ」
岸会長にそう言われて慌てて謝るけど、今はもう、そんな憎まれ口もイヤじゃない。
「テスト期間中で仕事溜まっちゃってるからね。来週は生徒総会、再来週は予算会議。まずは来週の資料作りからかな」
三年生中心に作られた文章を、庶務の二人と一緒に冊子にしていく。
三人でやれば、わりとすぐ仕事は片付いた。
「……なんか、思ったより早く終わったね」
「うん。庶務って三人いたら助かるな」
「でもまぁ男女1名って決まりだもんね」
遠回しに「わたしのおかげ」って言ってもらえてるみたいで少し嬉しくなる。
「てか、あとは今日無理しなくても充分間に合いそうだよね。……クラスでテスト打ち上げやってるんだけど、行ってもいい?」
そんな篠塚先輩の言葉で、今日は解散になった。
時間はまだ十五時。チラリと会長の方を見ると、大きなあくびをしたところだった。
「岸くん眠そうだねぇ」
「昨日も徹夜になっちまったからな。俺も今日はもう帰る」
そう言って立ち上がった会長と、目が合う。
「……今日はさすがに勉強会やらないぞ」
会長、やっぱり疲れた顔してる。
この数週間、わたしに勉強を教えながら、自分の勉強もしてたんだもんね。
しかも昨日もその前も徹夜。
「陽菜子ちゃん、鍵閉めるから一緒に出るよ」
生徒会室の鍵を揺らした川西先輩と、岸会長とわたしで並んで帰る。