会長サマと、夢と恋。
「お前、今日はどうだったんだよ、テスト」
「……あ、はい! 今日はけっこう自信あります! その他の科目も、会長が教えてくれたところが出たので……」
「結果、楽しみだね」
「順位出たらちゃんと報告しろよ」
「はい。……あ、あの!」
笑う二人を、少し勇気を出して呼び止める。
いきなり立ち止まったわたしに、会長も川西先輩も不思議そうな顔で振り返った。
「これっ、……今回のテストの、お礼のつもりです。会長には勉強教えてもらって、川西先輩にはそのきっかけを作ってもらって……。お二人には、感謝してるので」
カバンから取り出して二人に差し出したのは、……手作りのクッキー。
昨日思い立って、夜に焼いたものだ。
一応、購買のクッキーを意識して作って、それなりに美味しくできたと思う。
袋の口を赤のモールで留めたものを岸会長に、青のモールのものを川西先輩に。
「え、すごい、もしかして陽菜子ちゃんが作ったの⁉︎」
川西先輩はすぐにそれを受け取って、満面の笑顔で聞いてきた。
はい、と頷くと「お菓子とか作れるんだね、すごいよ」と褒めてくれた。
……一方の岸会長は、わたしの手の中のクッキーを見て、黙ったまま。
「あの、会長……」
「……お前、これいつ作ったんだ?」
「えっ」
わたしにそう聞いてきた岸会長の表情は、な、なんだか不機嫌そう……⁉︎
「まさか、今日が全部得意科目だからってロクに復習もしないで、昨日の夜クッキー焼いてた、わけじゃないよな?」
ギクリ、という効果音が聞こえそうなぐらい図星を突かれて、冷や汗が流れた。
百パーセント、会長の言う通りだ。
(やばい、勉強そっちのけで別のことしてた、って言ったら会長怒るに決まってた……!)
どうして気づかなかったんだろう。喜んでもらえると思い込んでた。
焦りながらも、わたしの頭の中でとっさに言い訳が浮かぶ。