会長サマと、夢と恋。

「なのに、相手が会長とか、ハードル高すぎるよ〜……」

ため息をついたところで、昼休み終了のチャイムが鳴った。

「じゃあとりあえず、マンガはその方向で行こう!」
「キャラクターのデザインとか、また打ち合わせしよう」

自分の好きな人がモデルのマンガって、やっぱり恥ずかしいな。
会長には絶対見せられない。

でも、会長って少し鈍そうだから、自分がモデルにされてるって気づかないかも。

なんて……やっぱりわたし、会長のことばかり考えてるみたい。



五時間目がはじまって、先生が入ってくる。

「現国のテスト返すぞー」

この時間は、国語。採点が終わった教科からどんどん答案が返ってきていて、これまで返却された他の教科はどれも平均点以上。正直、いけるんじゃないか、って思ってしまう。

(五十位以内、ほんとに夢じゃない……⁉︎)

本当に五十位以内に入ったら、岸会長は驚くかな。喜んでくれるだろうか。

でも、そしたら生徒会に入る流れになっちゃうかな。
仕事も慣れてきたし、それでもいいかなー……

「橋本」
「は、はい!」

悠長なことを考えていたら、先生に名前を呼ばれて、あわてて答案を取りに行く。

「……」

わたしの顔を見た先生は、なんだか難しい顔をしている、気がする?

伏せたまま受け取った答案を、開かないよう丸めて自分の席まで戻る。

最終日に行った現国のテスト、わからない問題はなかったし、一言で言っちゃえば「自信アリ」。
先に黒板に書かれたクラス平均は六十五点、クラス最高点は、九十六点。

クラストップの九十六点の可能性もあるかも、って期待しながらゆっくり答案をめくると。

「……え⁉︎」

いきなり大声を出したわたしに、クラス中の視線が集まる。

全員に答案を返し終えた先生が、立ち尽くすわたしの名前を呼んで。

「橋本、お前、このあと国語科準備室な」

先生は怒っているのか、哀れんでいるのか、呆れているのか。
わからないような声色でそう言って、テストの解説をし始める。

(ウソ、こんなことで⁉︎)

……心臓が、嫌なふうにうるさい。冷や汗が止まらない。つい力が入ってしまって、手の中の答案がぐしゃりと音を立てた。

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