会長サマと、夢と恋。


「こういう凡ミス、今どき珍しいぞ。マンガじゃないんだから」

そう言って先生はわたしの答案用紙の、“何も書かれていない”「氏名」のところを指で叩いた。

……そう、わたしは答案用紙に自分の名前を書かないで提出した、らしい。

点数のところには、「0」の文字。
つまり、0点。

え、なんで、どうして。
普通はテストが始まって答案をめくったら、まず名前を書くよね。

パニックの中でも何とか記憶をたどって行く。

……そうだ、確か。
問題を開いた瞬間、寸前まで予習してた漢字の書き取りの問題が見えて。
忘れないうちに! と思ってそこから取りかかったような気がする。

え、それですっかり氏名の欄も忘れて……

「最後まで丁寧に答え埋めてんだから、その後見直しとかしなかったのか」

国語のテストは、自分でもびっくりするぐらい順調に解けた。
もう、百点いけるんじゃないかってぐらいの気持ちで。

順調すぎて二十分ぐらい時間が余って、そこで眠気がきたわたしは。

そのまま解答欄を裏返しにして、机に伏せた。
今の答えに自信があるから、ヘンに悩み直してしまうのもイヤだったし。

(なんで寝ちゃったのか、って……前の日遅くまでクッキー作ってたから……!)

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