会長サマと、夢と恋。

「意味わかんねぇ。確か現国は最終日だったよな。確かお前、早く寝たってー……」

そこまで言って、会長は何か思い出したように目を見開いた。

「まさか、あのクッキー……」
「……勉強時間無駄にして、勝手にあんなの作って、寝不足になって点数落としました。ごめんなさい」

「なんで、」

「わたしが、やりたくてやったんです。会長、わたしのために勉強教えてくれたのに、本当にごめんなさい……」

自分から正直に話したくせに、会長に怒られるのが怖い。
突き放されたくない、今までと変わらない関係でいたい。

「クッキー、食っといて怒るのも矛盾してるけど……俺はお前の行動が理解できない」

「……」

「なんで大事な日に、そんなことしたんだよ」

思い浮かんだのは、“会長のために”とか“会長が好きだから”とか……どれも口に出せない理由ばかり。

どれも本心なのに、もちろんそんなこと言えなくて黙ったわたしを、会長はイライラした様子で見下ろしている。

少しの沈黙のあと、はぁ、って短く息を吐いたのが聞こえた。
でもそのため息の主は目の前の会長ではなく、それまで自分の席で黙々と資料整理をしていた川西先輩。

「……岸くんが言ったんじゃないの? 甘いもの食べたいって」

「……え?」

< 76 / 177 >

この作品をシェア

pagetop