会長サマと、夢と恋。
「意味わかんねぇ。確か現国は最終日だったよな。確かお前、早く寝たってー……」
そこまで言って、会長は何か思い出したように目を見開いた。
「まさか、あのクッキー……」
「……勉強時間無駄にして、勝手にあんなの作って、寝不足になって点数落としました。ごめんなさい」
「なんで、」
「わたしが、やりたくてやったんです。会長、わたしのために勉強教えてくれたのに、本当にごめんなさい……」
自分から正直に話したくせに、会長に怒られるのが怖い。
突き放されたくない、今までと変わらない関係でいたい。
「クッキー、食っといて怒るのも矛盾してるけど……俺はお前の行動が理解できない」
「……」
「なんで大事な日に、そんなことしたんだよ」
思い浮かんだのは、“会長のために”とか“会長が好きだから”とか……どれも口に出せない理由ばかり。
どれも本心なのに、もちろんそんなこと言えなくて黙ったわたしを、会長はイライラした様子で見下ろしている。
少しの沈黙のあと、はぁ、って短く息を吐いたのが聞こえた。
でもそのため息の主は目の前の会長ではなく、それまで自分の席で黙々と資料整理をしていた川西先輩。
「……岸くんが言ったんじゃないの? 甘いもの食べたいって」
「……え?」