会長サマと、夢と恋。
08.会長と、告白。

次の日、生徒会の呼び出しとか勉強会の連絡があったらどうしようって一日中ソワソワしてたけど、スマホは鳴らなかった。

(会長、逆に気を遣ってるのかな)

このまま気まずくなるぐらいなら、もっとハッキリ「勘違い」って否定したほうがよかったかもしれない。

誰かに相談したかったけど、今日はミナミが学校休みで、アキはバイトだからさっさと帰ってしまった。

……何もしなくていい放課後って、何をしてたっけ。
帰ってアニメのDVD? マンガ通し読み?

本当は一人でも、しっかり勉強する習慣をつけたほうがいいんだろうってことはわかってる。

だけど、目の前の目標がぼやけてしまったような感覚で、なんとなく頑張れない。

(そうだ、ネーム……)
好きなことになら、まだ取り組める。

この間つくったプロットを、「ネーム」という、ざっくりとしたマンガのような形にしてアキとミナミに見てもらうことになった。

それをもとに正式な下書きとペン入れを、絵の上手い二人にやってもらうんだ。

今日は図書室で描こう、と鞄を持って別棟の階段を上っていく。
すると、三年生の教室がある階の踊り場から話し声が聞こえた。

「……だから、言ってるだろ。その気持ちもあのときと同じで、勘違いだって」

(……! 岸会長の声!)

あのいい声を、わたしが聞き間違えるはずがない。話している一人は、岸会長だ。

え、勘違いって、もしかしてわたしのこと……?

階段の陰にかくれて聞き耳を立てると、話している相手の声も聞こえてきた。

「今度は違うの、信じて。岸くん」

(これ、長沢先輩?)

なんだか必死な様子の女性の声は、長沢先輩のものだ。

「信じられるわけないだろ。……俺は一度お前に、フラれてるんだ」

「‼︎」
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