会長サマと、夢と恋。

あまりの驚きに、声が出そうになった口元を慌てて抑える。
フラれてる?

え、会長のほうが、長沢先輩に?

逆じゃないのかな。今はなんだか、長沢先輩が会長に迫っているみたいだ。

(てか、この会話、すごく修羅場……⁉︎)

「あのときのことは、何回だって謝る。ごめんなさい。……今、わたしが好きなのは、岸くんだけなの」

「さおり……」

「だから、生徒会の任期が終わったら、改めてわたしと付き合ってほしい」

まるでお母さんが見ている恋愛ドラマみたいな会話に、心臓がバクバク言ってる。

告白シーンなんて見るのは初めてで、しかもそれは岸会長と長沢先輩のもので。

……会長、なんて答えるんだろう。

やっぱり、長沢先輩のことが好きだから、わたしの気持ちはなかったことにされたのかな。
だとしたら、悲しすぎる。

中学生のとき、付き合ってたって言ってたもんね。
生徒会役員同士の恋愛が禁止だから、あと少しの任期が終わるのを待ってるんだ。

二人がこのまま結ばれるなら、聞いちゃいけない会話のような気がして、そっと立ち去ろうとしたそのとき。

「……調子のいいことばっかり言うなよ。俺はもう、好きだのなんだのって言葉には、惑わされないから」

……ひどく、冷たい岸会長の声が響いた。

さすがの長沢先輩も黙ってしまって、その場が静まる。

『安心しろ。その気持ちは、「勘違い」だ』

昨日、岸会長がわたしにそう言ったのは、ワケありだったからなのだろうか。
そして、そのキッカケを作ったのは、長沢先輩―……?

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