会長サマと、夢と恋。

「……本当に、もうわたしのことは好きになってくれないの?」

「ああ」

「ねぇ岸くん、もしかしてそれって……、あの子のせい?」

「ん?」

「あの一年の……橋本、陽菜子」

(‼︎)

長沢先輩の口から出たのは、わたしの名前。
しかも、

「最近、あの子とベッタリじゃない。もしかして岸くん、あの子のことー……」

だなんて、的はずれな質問をしてるから、今すぐ飛び出していきたい衝動に駆られる。

(わたしも、フラれたようなものなのに!)
ハラハラしながら聞いていると、少し考えたあと、会長が口を開いた。

待って、なに言うの。絶対聞いちゃダメなのに、足が動かない。

覚悟して、ギュッと目をつぶると。

「……俺は、あいつのこと……」

キーンコーンカーンコーン
(……え)

会長の声と、放課後、17時を知らせるチャイムが重なった。

『あいつのこと』って、わたしだよね。

なにを言ったの⁉︎ 一番肝心なところが見事に聞こえなくて、肩を落とす。

「岸くん、」

「……とにかく。今まで通り、生徒会の会長・副会長として、よろしく頼む。じゃあ、俺は仕事があるから」

何か言いたそうな長沢先輩に別れを言って、会長は階段を下りてくる。

(やばい、このままじゃ、聞いてたのバレちゃう!)
慌ててわたしも階段を下りるようとすると、陽菜子ちゃん? と名前を呼ばれた。

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