会長サマと、夢と恋。
「まあ美容師になりたいってのはいま適当に考えただけなんだけどね」
「えっ⁉︎」
「ごめんごめん。俺、陽菜子ちゃんのこと応援するよ」
「ほんとうですか⁉︎」
「うん。……ただ、陽菜子ちゃんに限らず、岸くんを好きになって、うまくいくとは思えないけどね」
(どういう、意味……?)
二人だけの教室が、一瞬だけシンと静まる。
うまくいくとは思えない。
それはきっと「両想いにはなれない」って意味。
そんなのまだ望んでないって思ってても、その言葉の理由が気になってしまう。
「川西先輩、前に言ってましたよね、会長は女の子が苦手だって。……もしかしてそれって、長沢先輩とのことが関係してるんですか?」
さっき聞いてしまった二人の会話。
会長がわたしの告白を冗談だと流したことと、川西先輩がこの恋を「うまくいかない」と言い切る理由。
全部、原因は同じところにあるような気がした。
「……陽菜子ちゃん、知ってたの? 岸くんとさおりちゃんのこと」
「中学のとき、同じ塾で、付き合ってたって……。でもさっき、」
見たこと聞いたことを、ベラベラ話すのは良くないと思ってハッとするけど、川西先輩は話の続きをうながしてくる。
「大丈夫。もちろん岸くんにも、誰にも言わないから」
優しすぎる川西先輩に折れて、わたしは数分前の岸会長と長沢先輩の告白シーンのことを話してしまった。