会長サマと、夢と恋。

ノートに案を書き出すと、いろいろなパターンが出てくる。
だいたい三十ページ前後におさまるような話にしなくちゃいけない。

学校の人気者の先輩は、いつも笑顔で王子様みたいな存在。
でも、本当は腹黒ドSで、その性格を知ってる主人公には冷たい。

嫌な存在だったはずなのに、素直じゃないながらに主人公を助けてくれる。
はげましてくれる。

……マンガのラストは、やっぱり、ハッピーエンド。

「俺も、……わりと最初から、お前のことが好きだったんだけど」

わかりにくい、ツンデレ具合。
でもこの物語の二人は、晴れて恋人同士だ。

……わたしと会長じゃ、ありえないけどね。

どんなエピソードを入れるか、登場人物の気持ちがどんなふうに動いたか。
考えていたら、夢中でペンを走らせていた。

「ずいぶん楽しそうなこと考えてるのね」

「いや、これはマンガのネタで……。って、え⁉︎」

……夢中になりすぎて、ノートを覗き込まれていることに気付かなかった。

パッと顔を上げると、
「長沢、先輩……」

無表情で、わたしを見下ろす長沢先輩が立っていた。

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